温故知新を示唆に注目!|葛飾区お花茶屋の歯科・インプラント|コージ歯科

温故知新を示唆に注目!

温故知新を示唆に注目:時代・視点を変え「歯科医療」「歯科医業」をクローズアップ

 

歯科医療が社会から興味・関心を持たれ始めているが、政府の基本政策として、「骨太の方針2023年」に次のように記された。「全身の健康と口腔の健康に関する科学的根拠の集積と国民への適切な情報提供、生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討、オーラルフレイル対策・疾病の重症化予防につながる歯科専門職による口腔健康管理の充実、歯科医療職間・医科歯科連携を始めとする関係職種間・関係機関間の連携、歯科衛生士・歯科技工士の人材確保、歯科技工を含む歯科領域におけるICTの活用を推進し、歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む。また、市場価格に左右されない歯科用材料の導入を推進する」。この方針を具体的に進めていくことになる。

 

過去の診療の歴史を見据えながらも、歯科医療の基本を簡潔に言えば齲蝕診療(根管治療、保存治療)、歯周病治療、義歯治療だと言えるが、近年は、新しい分野を歯科医療として進められているが、歯科医療・歯科医業を問うことが関係者から注目され始めている。同時に飯塚哲夫著の「歯科医療とはなにか」(1989年刊行・医歯薬出版発行)の内容で既に一石が投じられていたことが想起される。本書は冒頭から、斬新・厳しい視点からの論及であり、当時の歯科界では話題になった。第1章「歯科医業の評価」「歯科医療の評価」「歯科医業の医業化」など。第Ⅱ章「釜中の魚」では、「歯科医療とはなにか」「二種類の歯科技工士」「歯科医療の質」などにも言及している。釜中の魚(死や危険が眼前に迫っているのに何も気づかず、のんびりしていることのたとえ)に触れて、厳しい論評が続くが、歯科への期待を込めてのようだ。なお、1971(昭和46)には「近代口腔科学研究会」を設立している。

 

本書の最後に著者は「歯科医業の歴史を繙いてみると、われわれは否定のしようのない二つの厳然たる事実を知る。歯科医業も濫觴は、医業範疇にはなく、したがって歯科医師はそもそも医師でなかったという事実と歯科医業の発展の歴史は、医業化の歴史であったという事実の二つである。歯科医業の医業化は、自然の成り行きであり、世界的規模での社会の志向するところであったのである。また解説を寄せている坂初彦氏は「氏のこの活動が、実を結びやがて歯科界を明るく希望に満ちた世界にするために、氏の一層の活躍が必要なことは明白である」と激励している。30余年前の書籍であるが、今日至り改善・改革された点はあるが、依然として課題視されている点が、まだあるようだ。

 

一方、最近になり、福岡県歯科保険医協会理事である横田晟(あきら)氏の“論考”「曖昧な“歯科医業”の定義と弊害」で“歯科医業”を言及している(月刊保団連20193)ことがクローズアップされている。関係者からは“看過されてきた問題”と指摘しているが、ある意味で、歯科臨床の根拠論に迫る内容のようだ。「医業は医師でなければしてはならないと法律で定めている。結果として歯科医師は手が出せない。今の歯科医業は医業をなさねばなり立たない。しかし、歯科医師が医業をなすことを法の解釈、通達、通知によって黙認している。これはいびつだ。法律によって担保すべきだ」と強調している。飯塚氏は自著の中で、「歯科医業」を臨床的視点から言及しており、横田理事は、法的視点から問題点を指摘している。

 

近年の歯科は、「骨太の方針」から社会に“歯科政策”を訴えてきた。ITの活用から進展する歯科DXの議論まで。今日まで、歯科医師が臨床を真摯に学び、患者に対応してきたのも事実である。時代の趨勢で沿って歯科医療をしてきたが、両氏の歯科医業の視点の相違はあるが、論点を比較考察することで、“問題意識”を涵養されてくる。そういう時期に来ているのかもしれない。