歯科技工界の課題|お花茶屋の歯科・インプラント|コージ歯科

歯科技工界の課題

 

 歯科技工界は厳しい時代を迎えて、新たな展望を模索している。法律・制度等では日本歯科技工士会が、歯科技工士の社会的地位向上、職業・労働環境の改善、安定した技工所経営への整備などに対して、精力的な活動を展開している。一方、個々の歯科技工士は、自ら問題意識を持ちながら、研修・学会などに参加しているが、IT化が進む中での歯科技工の在り方を含め、技術習得・情報収集に努めている。それは歯科界全体にも指摘できる状況でもある。当然ながら、歯科診療所、訪問歯科などでの臨床において、日進月歩で進化するIT技術の活用が求められている。

こうした時代変革の中で、二人の歯科技工士が続けて逝去された。一人は技術研鑽に将来を見据えての活動を展開してきた桑田正博氏(愛歯技工専門学校名誉校長・元ボストン大学歯学部客員教授)。716日に逝去(享年85)された。米国で“金属焼き付けポーセレン”の研究・開発(1960年代)に尽力し、技工士の立場から実用化に貢献されたことが評価され、アメリカ歯科補綴学会フェローほか名誉ある賞を受賞していた。また、保母須弥也氏(元UCLA客員教授・元奥羽大学学長)が、米国から日本にメタルボンドの技術を紹介しながらその普及に専念されたことで、全国的に“ポーセレンブーム”が起き、桑田氏は、歯科技工サイドから臨床での技術・意義・理解を訴えていた。当時は補綴関係の講演、研修、シンポジウムは満席であり、都道府県歯科医師会主催の学術講演会でも盛況であった。

2000年のプレミアム講演では、海外においても、“21世紀の歯科・歯科技工”を英語で講演し海外からも評価を得ていた。時代の分岐点になると指摘される、“CAD/CAМ”が普及する歯科界での歯科技工士・歯科技工が問われることになるが、桑田氏には、世界の動向を理解した中で、歯科界への課題・展望を見据えて新たな提言を期待したいところでもあった。「歯科医師の先生、歯科技工士さん、議論をしましょう。互いに持っている知識・技術を論じる中で、新しい認識・理解が生まれます。“技術には科学が必要、臨床家には、常に医療の心が必要”として、一人ひとりの健康に、歯科技工士として貢献する。そこに歯科技工士の存在・価値があるのです」と強調。恒例となった愛歯技工専門学校での正月セミナー(研修)では、技術論は当然であるが、常に歯科・歯科技工への熱い思いを語っていた。なお、日本の歯科技工業界の技術発展に貢献したことは誰もが認めるところで、日本歯科技工士会からも、杉岡範明会長名でコメントが出されていた。要旨は以下の通り。

4年前、歯科技工士会館で“歯科の道に生きるということ”と題してご講演された折、歯科技工士としての情熱に接し、身の引き締まる一時を過ごしました。また、一昨年には本会の公益事業の一環として、ベトナム国際歯科展示学会でのご講演、ベトナム国立中央歯顎顔病院での陶材築盛の技術指導など精力的に活動されました。桑田氏によって、日本の歯科技工は技術の伝習から、技術と学問の教育に進化したと言っても過言ではありません。また、世界で活躍するその姿は私たちの誇りでもありました。改めて、そのご功績を称え、心から感謝とお礼を申し上げます」。

もう一人は、桑田氏と同窓(愛歯技工専門学校)の斉藤隆司氏で、1983年に()コアデンタル横浜を創立し、絶えず歯科技工物の質の向上を目標にしていたが、“歯科技工所”の経営・在り方にも視野に入れて今日に至っている。結果として、今では業界でトップクラスの“企業(代表取締役・陸誠、社員数77)”として評価されるまでになった。中国の歯科技工士養成機関との研修交流を実践するなど、対外的にも日本の歯科技工士が貢献できることも含めた活動をしていた。会長職に就いても熱い思いは変わらなかったようだ。しかし、“斉藤氏が逝去”との一報が入ったことで、オクネットとして825日、関係者に確認した。「822日、病床に伏していた身ではあったが、急に悪化して亡くなられた(享年85)という、知らせを聞いて驚いている状況」ということであった。また、先月の桑田氏に続けて業界への訃報になったことについて、「桑田先生とは本当に仲が良く、コアデンタルでの講演が終わると、いつも近くの料亭で席を設けました。談笑しながらも、時に真顔で技術論を交わしていた様子が思い出されます。“桑田先生が呼んだのかな”と言う人もいます」と述べていた。

斉藤氏は、“歯科技工士・技工所の在り方”を問題意識していたが、業界でのトップレベルの企業に成長させてきた結果を出している。今後も変化する歯科技工への対応、経営の在り方などを検討してきた。まさに、若手の歯科技工士から魅力ある業界になるための課題を問い続けていた。時代から乖離し続けた旧来型の経営システムから、経営の近代化を図り企業として位置付け、社会的に評価されることで、歯科技工所のイメージアップになるとして尽力してきた。

 桑田・斉藤の両氏には、技工業界の御意見番として、まだまだ期待するところであった。今回、両氏に共通するキーワードが“IT化の推進”である。その臨床的な対応が改めて問われてくる。「歯科技工士は“技工オペレーター”と称されるのか。歯科技工士は何をする人なのか」「歯科技工士は何を持って評価されるのか」「臨床上における新しい具体的な課題は何か」「技工作業の“効率化の追求”による評価と課題」「IT化の推進に伴う法的課題」など。ITの先進国である欧米での歯科技工や経営が、日本での浸透の可能性・展望を知りたいところである。それには、歯科医師にも理解・認識が問われてくるが、歯科界全体にも波及するのは必至とされている。“手作業・ワンマンラボ”の形態スタイルが大半であった技工時代から半世紀以上が過ぎた今の時代に、両氏の逝去は、遣り残した“歯科技工の新時代”の構築・到来を期待していると伝えているようでもある。

  • 技工業界に歴史を刻んだ二人訃報:桑田・斉藤両歯科技工士が逝去・歯科技工界の課題

歯科技工界の臨床課題:歯科医師は“今後どうなるの”に終始&新たな展望見えず 

菅義偉首相は817日、総理大臣官邸で会見を開いた。記者からは止まらない感染拡大についての記者からの質疑応答があったが従来通りの返答であったが、今回の決定を受け、緊急事態宣言は820日~912日にかけて、以下の都府県に出される。現在出されている地域では期限が延長されることになり、新たな展開の時期がスタートした。

医療界では、2022年度の診療報酬改定への議論が新型コロナウイルス感染症拡大防止対策に全力を注ぐが、同時に診療報酬の課題への対応する議論も注目される。もちろん、歯科も同様である。骨太の方針2021“の趣旨に沿いながらの議論が中医協で論議される。歯科の話題には欠かせないのが歯科技工士の現状・将来展望が、以前から問われている。しかし、日技代議員会、学術研修などで時にクローズアップされ議論されては来たが、漠然とした感は否定できず、外部から「技工問題は、どうなっていくの」の疑問に終始しているのが現実といえそうだ。

2014年のCAD/CAM冠の保険適用がされ、CAD/CAMによるデザインから加工まで一貫した技工作業を効率よく行えるようにと期待を込めてのスタートした時期である。こうした時代の推移に、技工界としてどう受けて止めていくのか、課題と可能性の議論があまり聞かれない。日本歯科デジタ学会での講演・シンポジウムでは、関係する専門家、歯系大学(補綴学講座)の研究員からの発表はあり、日進月歩を実感させる内容が続き、今日に至っている。当然ながら歯科が中心にであったが、連携・リンクする歯科技工の症例報告も行われている。

日本歯科技工士会でも、会員の多くは、旧来型といえる、歯科技工士の一人ひとりの手作業が中心となっている現状を理解しながらも、今後の展望として課題・期待の情報交換問題の場面が見えてこない。「大臣告示73問題」「海外委託技工」「歯科技工士の存在」などは日技代議員会も議論されて来た。歯科技工所の形態の規模から、大手個人ラボの違いによる評価の議論はあるが、デジタル化時代の到来から、その対応に俄然注目されてきている。

昨今のように“デジタル化時代における、歯科技工の在り方について、都内の歯科技工所社長は、818日オクネットの取材に次のようにコメントしている。「歯科技工としての問題はあります。当然ですが、臨床的には、技術の追究・向上に努めるのですが “技工士としての技術”は最低限の課題です。時代背景が明らかに変わりました。当然、経済的な問題も浮上していたこともあり、大きな変革の時期です。直ぐに変化はしないが、方向性・筋道をつけることは必要だと痛感している」とコメントしていた。ただし、この話を「貴方は勝ち組だから言えることだよ」「経営も厳しいので、将来のことは、後輩に任せます」と発言し、関係ないというスタンスを取る歯科技工士はまだまだ存在している。 

一方で「九州地区の情報です。デジタル化での労働環境を整理したことなどを説明した中で、技工料金の値上げに言及したが、歯科医からは了解していただいた。こうした動きが出てきているようです」と述べていた。「こうした動きは、歯科技工界の展望になり、次世代の技工士に訴えられることがあると思っている」と “デジタル技工”の捉え方・意味を指摘していた。20歳代・30歳代の歯科医師の時代感覚は、60歳代・70歳代とは、明確に違っているようだ。

厚労省の有識者会議で“歯科技工の問題”をテーマにして、真剣に議論を重ね、内容をまとめ報告書が出されている。その後の、新たな歯科界・技工界での言動や法的な動きが出ることはなく、時間の経緯は間違いなく続いている。「技工士や技工組織が、率先して能動的動くことの、対外的影響などを踏まえると慎重にならざるを得ないのは、歯科界の常識とされてきている」と元日技幹部は指摘している。さらに、元都歯幹部は、「歯科技工士や歯科衛生士の問題は、基本は、やはり“歯科医師の問題”とした理解・浸透が必要。時代が変革しているのは、70歳を過ぎた歯科医師が実感している」と技工士問題になると吐露している。

6月には地区歯科医師会の役員交代の時期であり、新しく下町地区の会長に就いた歯科医師は、「歯科医師会も大変だが、もっと大変なのが歯科技工士会では。区単位の支部では、組織が成り立たない所も。我々も注目する話題も聞かれないし、大丈夫なのか」と不安視していた。“働き方改革”、“職場離職”、“養成機関閉校”など問題は、定番の問題視である。危機感の意識を示す意味で、日歯・日技の共同記者会見も検討してもいいかもしれない。従来の方法を継続することの意味も否定しないが、新たな方法の検討・実施するする時期は来ているようだ。IT技術の活用と融合の新たな提言など必要かもしれない。歯科技工士法の解釈や運用、特例措置など中期的に新たな展開を示す議論を期待している歯科技工士は潜在も含めて少なからずいるはずだ。