2021/08/16
●磁性アタッチメント保険収載:歯科医師・技工士は“自費⇒保険”」に困惑
6月に開催された中医協総会で、9月収載予定の医療機器の保険適用について審議され、歯科では9月1日から、有床義歯の磁性アタッチメントが、保険収載されることになり話
題になった。現在の対象製品は「フィジオマグネット」(株)ケディカのみとなっている。保険償還価格は、有床義歯に付ける「磁石構造体」7,770円と、支台歯の根面板につ
ける「キーパー」2,330円。歯科医師・歯科技工士の臨床的な評価が注目されるが、懸念と期待はあるが、臨床的な技術評価、保険収載の在り方などの議論が別途にして、総じ
て臨床ケース数についての指摘があったが、改めて以下のようなコメントをいただいた。
「私は磁性アタッチメントの研修会にも参加し、対応できる用意はありますが、未だ適応できる患者さんに出会っておりません。 正確には、一人だけやったことがあります
が、”窮屈だ”との訴えで除去せざるを得ませんでした。もう一人は、他院で作った磁性アタッチメント義歯のケースです。私はよくできていると思いましたが、やはり”窮屈
だ”との訴えで、結局インプラントでの対応になりました。理由がわからないので、研修会で、有名な先生に質問したのですが、その講師の先生も「わからない」との回答でし
た。 最近は、専門雑誌で磁性アタッチメントに関する記事を目にすることもほとんどありません。 どうして保険収載されたのか不思議ですが、私自身は、それこそ、セラモ
メタル冠もインプラントもスケレトンPDもMTMも保険適応にするべきという考えですので、その点からは歓迎しております。もちろん、そのことと、安心、安全な歯科医療が
人々にしっかりと提供されることとは別の問題です。 磁性アタッチメントは、聞きかじり程度の知識では取り扱えないと私は思っています」(東京都・歯科医師)。
「私も磁性アタッチメントを時々使用しますが、あくまで補助装置ですよね。 好きな先生は頻繁に使われるようですが、 それこそ 自由診療だからですかね、それが利点
でしたし、歯科技工士も”技工料”を考えたら、嬉しいのでは(笑)」(千葉県・歯科医師)。
「私も一時期、根面被覆するのだったら、コーヌスか、磁性アタッチメントかと、考えた時期もありましたが、コーヌスは、面倒、維持が不明、磁性アタッチメントは、自費
で患者さんから遠慮され、見限ることになりました。うちのような超高齢社会では、本当に義歯が多く、悩んでいる人もいるので、選択の幅が増えていいかもしれません。た
だ、もう少し早く導入されればよかったなあと(笑)あと、何年臨床できるか、わかりませんので」(富山県・歯科医師)。
「結構している歯科医院ありますが、私はほとんどしていません。義歯が必要な患者さん等に対しての補綴としてはありますが、“磁性アタッチメント”でなければというケース
は本当に少ないのでは、私の勉強不足ですかね。でも自費診療から保険診療になれば、比較的多くしていた歯科医院では戸惑うのでは。患者さんもどう思いますかね。正直、
自費から保険ですかね。患者負担を減らし、普及させたいのですかね。今後、話題になる保険義歯に絡み、臨床データがほしいのかもしれないですね」(愛知県・歯科医師)
「Oリングでしたことがありますが、経過を含めて患者評価は悪くなかったです。ただ、珍しいケースになっていますね。技工サイドとしても、極めて難しい技術ではないの
で、経済的には、“良い仕事”です。でも、我々が決めることではないので、歯科医師次第です」(神奈川県・歯科技工士)。