個人特定鑑定の方法と評価|葛飾区お花茶屋の歯科・インプラント|コージ歯科

個人特定鑑定の方法と評価

個人特定鑑定の方法と評価:マスコミ取材に対応する山田神歯大教授が説明

 

 5 13日にYAHOOニュースとしてテレビ山梨からの報道が配信された、山梨県の山村で発見されていた肩甲骨などからの個人特定を巡り、専門家による鑑定が求められていた。ミトコンドリアDNA鑑定を行い、この骨は、3年前に近くのキャンプ場で行方不明になった小倉美咲さんの母・とも子さんと血縁関係にある人物であることは明らかになったとされた。さらに徐々に特定に近づいてきた中で、14日になると、可能性のあった行方不明だった小倉美咲さんとDNA鑑定で一致したと各社一斉に報道した。

母系の血縁関係がわかるミトコンドリアDNA型鑑定などは、知る人ぞ知るであったが、素人ながらDNA鑑定は難しいことなのか、何か特別な理由があるのか漠然ながら想定していた。こうした現実的な事実に、山田良広神奈川歯科大学教授(法医学)が取材され要旨答えていた。「ミトコンドリアDNAは一致しているが、それほど確定的に高くないことを示唆している。 特定できないというか、たまたま合ってしまったということもある。 母親からしか遺伝しないミトコンドリアDNAは、日本人に最も多い型は、およそ5人に1人が持っていて、この場合、DNA型が一致しても別人の可能性もあります。 一方、1000人に1人しか持っていない珍しい型もあり、その場合は本人である可能性が高まるといいます」。さらに「やはり核DNA鑑定ができないと、なかなか最終的な判断は難しいと思います」と特定鑑定の方法と評価を平易にポイントを説明していた。

遺体の個人識別(身元を特定する)に用いるデータには、歯科所見、指掌紋、DNAなどがあるが、身元確認が長期化するような場合には、主として歯科所見とDNAが用いられ、とりわけ歯科所見の有効性が広く証明され、2001年のニューヨーク世界貿易センタービルの際には身元が判明したご遺体の約35%、2004年のスマトラ島沖地震によるタイの津波災害では約56%が歯科所見により身元確認ができたとの報告がされている。今回は、遺体が消失された異例のケースであり、DNA鑑定の方法であったが、山田教授から、ミトコンドリアDNA型鑑定と核DNA鑑定の違いを改めて説明されたことで理解された。

 5月15日、第16回日本法歯科医学会学術大会が、神歯大附属横浜研修センターで、対面・ZOOM形式で開催された。大会長を務める山田教授は、開催にあたり次のように挨拶していた。「ウィズコロナにおける歯科法医学の役割に関する特別講演とシンポジウムを予定しております。ウィズコロナでは遺体からの歯科所見採取に最大限の感染予防が必要になると思われますので、いろいろな観点からの討論を行います。また、近い将来に発生が予測される大地震や頻繁する大雨などの自然災害、2019年の京都アニメーション・2021年の京王線内・大阪北新地雑居ビルと放火殺人事件が相次いで発生し、歯による身元確認の必要性が高まっています。これらと同様な事件・災害に実際直面した場合、歯科法医学ができる役割について考える場にしたいとも考えています」。

 口演発表、ポスターセッションなどあったが、メイン企画は次のとおり。「特別講演」=戦略的なCOVID-19対応と災害時医療との接点―感染症流行期における法歯科学―」阿南英明(神奈川県庁/藤沢市民病院)、「シンポジウム」=『ウイズコロナにおける法医学の役割とは』:「新型コロナウイルスと歯科」槻木恵一(神奈川歯科大学病理学)、「ウイズコロナにおける法医学の役割」槙野陽介(東大大学院法医学)、「遺体の歯科初見採取時の感染防護対策」斉藤久子(千葉大医学院法医学)、アドバイザー:阿南英明(神奈川県庁/藤沢市民病院)

 歯科も医科と同様に、全国都道府県に警察歯科医会が設立されており、社会貢献を果たしている。歯科の特性を生かした職務であるが、最近の傾向から、天候・地震などの自然災害の発生の確率は高くなっていると理解している。山田教授が一般マスコミからの取材されることの意味は、重要であり、歯科を広く国民に理解を求める機会でもあることを再認識しておく必要はある。