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“予測歯科”の意義 葛飾区お花茶屋歯科

葛飾区お花茶屋のコージ歯科の貝塚 浩二です 予測歯科の意義について

 歯科界での話題は歯周病が中心になっていることは否定できないが、歯周病と全身疾患との関係は以前から紹介・対応が議論されていた。こうした中で、関係する内容が、月刊文藝春秋(4月号)で、天野敦雄阪大歯学部教授の「万病のもと“歯周病”に気をつけろ」のタイトルでの記事掲載(取材・構成:長田昭二)がされている。要約して以下に紹介する。

冒頭、天野教授は、阪大歯学部附属病院予防歯科では、口臭外来、禁煙外来、予測歯科外来の3つの外来を開設していると紹介。特に予測歯科について、「あまり聞き慣れない名称ですが、これは5年ほど前に私が作った名称です。これからの歯科医療、医療全般、さらには社会保障制度を考える上で、意味がある診療内容であると思っています」と前置きをしながら次のように続けている。

「予測歯科の対象は歯周病に限定されます。その人が将来歯周病になるリスクあるか否かを科学的に検証し、“リスクあり”と診断されたのみを対象に、その危険性を軽減する取り組みを進めていく非常に新しい歯科領域なのです」とした。さらに歯周病の理解と時代背景の推移に触れて改めて説明した。「昭和の終わり頃は、歯医者の仕事は、“虫歯治療・入れ歯治療”が花形。歯周治療はマイナーの存在であった。予防という考え方自体は歯科には馴染まないものでした。今は50代半ば以上の世代の人は、“歯科=虫歯治療”のイメージを強くもっていて、“歯医者は痛くなったら行くところ”と考えている人も少なくないのです」と指摘。その後の社会では、“8020運動”の推進、歯科への関心・意識向上などで虫歯は減少してきた。一方で増加しているのが歯周病であった」と説明。

さらに、歯周病の捉え方について、感染性の歯周病菌は、虫歯になる虫歯菌とは本質的に相違があるとした上で、「歯周病が進行すると歯が抜け落ちる。これが歯周病の終末像と思われるがそうでないのです。それは、全身の臓器に起きる重大な疾患と大きな関係があることです」と主張のポイントを指摘した。続けて様々な疾患がある中で、特に歯周病と糖尿病との関係について、「医科の診療科で糖尿病と診断された患者は、歯科に送り歯周病の有無を確認し、歯周病があれば、まず歯科で治療を行う。日本糖尿病学会の指針として示している」と医科歯科連携になっている事例を報告。既に歯科界では周知のことであるが、歯周病との関係がある疾病として、関節リウマチ、動脈硬化、大腸がん、骨粗鬆症、早産、低体重児出産、認知症、誤嚥性肺炎など広範囲に及んでいるとを付記し、読者に問題意識を促していた。「これが歯科だけでなく医科を含めた医療の共通認識になりつつあること。歯周病を減らすことで、医療費の下げられる可能性があることに注目して、厚労省は検証作業に本格的に取り組み始めました」と最近の動向にも言及した。

 ここで天野教授は興味深い研究を報告。「歯周病菌の保菌者でも、歯周病を発症する人、しない人がいるという個人差があることは以前から分かっています。歯周病菌の中でPg菌による発症リスクが高いのは知っていました。そこから、さらに発症確率に差をつける因子があるのではないかと考え検討したが、結果として、事実、Pg菌にいくつか種類があるが、種類によって発症確率が大きく変わってくることが判明。結論として天野教授が名付けた“パンチパーマ型”の菌が、歯周病の元凶と捉えられる研究成果を得た」と貴重な点を確認したことを明らかにした。そこで、「Pg菌という指標が見つかったので、対策を講じる人とそうでない人に分けるのが先決になります。具体的には、患者の歯垢を検体としてPCR検査で菌種を調べ、将来、歯周病になるリスクが高いとされたら、菌を減らす治療し、反対にリスクが低い場合はそれで終わりです」と具体的な臨床方法も説明した。

 今回の“予想歯科”の考え方のヒントに、高血圧治療を挙げ話を進める。「高血圧自体は、それ自体は病気ではありません。ただし高血圧が続くと心筋梗塞、脳梗塞など病気を起こす危険性がある。そこで、国は高血圧の“状態”を医療制度上“疾患”として位置づけ、その治療に健康保険が適用される仕組みを構築。同じことが歯周病でも考えられるのではないか」と考えたという。歯周病の先に重大な全身疾患が多数あれば、歯周病予防を健康保険で賄ってもおかしくないとして、「病気でない高血圧の治療に健康保険が使えるのなら、歯周病でない歯周病菌保菌者のケアにも健康保険を適用してもいいはず」と強調し、新しい発想・視点からの歯周病への捉え方を示していた。今後、さらに議論を深めることの意義はあり、国民にとっても“健康維持・確保”からの期待したい内容でもありそうだ。それは、時代の推移・趨勢が歯科界に促しているのかもしれない。