歯科医師とは

歯科医師とは • 歯科医師の任務・定義・義務 歯科医師の任務・定義・義務 1)歯科医師の任務 (歯科医師法第1条 昭和23年7月30日施行) 歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌ることによって、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。 2)歯科医師の法的定義 (歯科医学大事典 1989) 厚生大臣の免許(歯科医師免許)を取得して歯科医業を行う者(行うことの出来る者も含む)であり、歯科医療及び保健指導をつかさどることにより、公衆衛生の向上・増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保する任務を担っている者である。 3)歯科医師法に定められている歯科医師の義務 1.療養指導義務 2.応召義務 3.診断書の交付義務 4.無診療治療の禁止 5.処方箋の交付義務 6.歯科医師の現状届 7.診療録の記載及び保存義務 歯科医師の歴史 我が国では明治7年(1874年)に医制が公布され、医師になるには、医術開業試験に合格することが求められることになりました。小幡英之助は、翌年実施された第1回の試験に「歯科」を専門に受験、合格しました(医籍4号)。 このことは歯科を専攻する医師として登録されたことになりますが、小幡が西洋歯科医学を専攻し「歯科」という語を初めて用いたこともあり、日本で最初の(近代)歯科医師とされています。その後明治16年(1883年)、新たに歯科医籍が作られた結果、医師と歯科医師は、法的に別個の存在となりました。 歯科医師の業務 歯科医師は歯の治療、保健指導、健康管理などをします。治療については、むし歯の処置や入れ歯・詰め物・冠・差し歯などの製作と装着、歯並びの矯正、抜歯やインプラントなどの外科的治療に加えて口腔領域の良・悪性腫瘍も対象となります。 附 歯科医師は、医師の施術可能な口腔外科、口腔内科的な治療行為をすることができ、歯科技工士の業務である歯科補綴物の製作も可能です。失われた機能を代わりの物で補填すること、すなわち補綴・充填・修復物の装着をすることは歯科医師のみに許されています。 歯科医師による歯科保健事業等 歯科医師(会)による健診・予防・指導・啓発も含めた各ライフステージにおける歯科保健事業や社会貢献活動等は年間を通して多数行われています。 妊産婦の方、1・5歳児、3歳児の健診をはじめ、保育園・幼稚園での歯科保健活動、障害のある方や、ご高齢の方を対象とした事業、口腔がん検診等々、中でも学校歯科医が小・中・高等学校で行っている学校歯科健診は広く知られています。 以下、学校歯科医を始め、産業歯科医、警察歯科医の概要を紹介します。 学校歯科医 学校歯科医とは、学校保健安全法で定められている、大学以外の学校で歯科健診や歯科保健指導などの職務を非常勤で行う歯科医師のことです。 下記の表は学校歯科医が実施した小・中・高等学校の歯科健診の結果に基づき文部科学省が行った平成21年度の保健統計調査の結果です。 画像をクリックしてダウンロードしてください 42kb ・学校保健安全法(電子政府の総合窓口 イーガブ)より抜粋 両津勘吉以外歯科医師です。 (学校医、学校歯科医及び学校薬剤師) 第二十三条 学校には、学校医を置くものとする。 2 大学以外の学校には、学校歯科医及び学校薬剤師を置くものとする。 3 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師は、それぞれ医師、歯科医師又は薬剤師のうちから、任命し、又は委嘱する。 4 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師は、学校における保健管理に関する専門的事項に関し、技術及び指導に従事する。 5 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の職務執行の準則は、文部科学省令で定める。 ・学校保健安全法施行規則(電子政府の総合窓口 イーガブ)より抜粋 (学校歯科医の職務執行の準則) 第二十三条 学校歯科医の職務執行の準則は、次の各号に掲げるとおりとする。 一 学校保健計画及び学校安全計画の立案に参与すること。 二 法第八条の健康相談に従事すること。 三 法第九条の保健指導に従事すること。 四 法第十三条の健康診断のうち歯の検査に従事すること。 五 法第十四条の疾病の予防処置のうち齲歯その他の歯疾の予防処置に従事すること。 六 市町村の教育委員会の求めにより、法第十一条の健康診断のうち歯の検査に従事すること。 七 前各号に掲げるもののほか、必要に応じ、学校における保健管理に関する専門的事項に関する指導に従事すること。 八 学校歯科医は、前項の職務に従事したときは、その状況の概要を学校歯科医執務記録簿に記入して校長に提出するものとする。 ※参考 日本学校歯科医会HP:http://www.nichigakushi.or.jp/ 産業歯科医 産業歯科医とは法律上、一定の有害な業務(塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗(ふつ)化水素、黄りんその他歯又はその支持組織に有害な物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務)に従事する者に対して健康診断を行う歯科医師のことを言います。 しかし、歯や口腔と全身の健康との関わりが明らかになりつつある近年では、その他の業務に従事する労働者に対しても、定期的な歯科健診を行うことが求められつつあります。 日本歯科医師会では平成21年、「標準的な成人歯科健診プログラム・保健指導マニュアル」を作成し、従来の疾病発見型とは異なる、受診者に必要な類型化を行う支援型歯科健診の実施を勧めています。 また、産業歯科医の知識や技術の向上のため、産業歯科医研修会や産業医学講習会、労働衛生コンサルタント試験受験講習会等の研修会・講習会を実施しています。 ・働安全衛生規則(電子政府の総合窓口 イーガブ)第十四条より抜粋 (産業医及び産業歯科医の職務等) 5 事業者は、令第二十二条第三項の業務に常時五十人以上の労働者を従事させる事業場については、第一項各号に掲げる事項のうち当該労働者の歯又はその支持組織に関する事項について、適時、歯科医師の意見を聴くようにしなければならない。 6 前項の事業場の労働者に対して法第六十六条第三項の健康診断を行なつた歯科医師は、当該事業場の事業者又は総括安全衛生管理者に対し、当該労働者の健康障害(歯又はその支持組織に関するものに限る。)を防止するため必要な事項を勧告することができる。 警察歯科医 警察歯科医とは、大規模災害や事故・事件などにより著しく損傷した遺体の身元を確認する際、歯科所見によって確認に協力する歯科医師のことを言います。 昭和60年8月に起きた御巣鷹の尾根(群馬県)での日航ジャンボ機墜落事故の際、歯の所見が犠牲者の身元の特定に役立ったことを契機に、歯牙の特徴による遺体の身元確認を始め、身元確認作業における歯科医師の役割が重要視されるようになりました。そして、全国各地で警察歯科医の組織が発足されるようになり、今では警察だけではなく自衛隊や海上保安庁と連携体制を構築するなど、歯科医師会による災害時に備えた活動や、身元不明遺体の歯科所見による確認活動が積極的に行われています。 日本歯科医師会では大規模災害発生時に、身元確認作業に限らず歯科医師として果たすべき役割について考え、平成22年に「大規模災害時の歯科医師会行動計画」を作成するなど、警察歯科医活動に関する様々な取り組みを行っています。 歯科医師・歯科医療機関の数 平成28年12月31日現在における全国の届出「歯科医師数」は104,533人で、「男」80,189人(総数の76.7%)、「女」24,344人(同23.3%)となっています(厚生労働省 平成28年医師・歯科医師・薬剤師調査)。 歯科医師を目指す方のために 歯科医師になるには 通常、歯科医師になるには、歯科大学や大学の歯学部で6年間の教育を受け、、歯科医師国家試験に合格し、歯科医師資格(免許)を取得しなければなりません。2006年4月からは資格取得後、研修施設の指定を受けた病院・診療所などで1年以上の臨床研修が義務付けられています。 歯科医師に付与される資格 (1)無試験・講習(歯科医師資格に付与される資格) 食品衛生管理者・衛生管理者 他 (2)有試験(受験資格が付与または試験の一部免除) 臨床検査技師・労働衛生コンサルタント・介護支援専門員 他 歯科医師と医師の違い 基本的に歯科医師は歯学部を、医師は医学部を卒業した者がなることが出来ます。教育年限は6年間で、その教育内容には共通点と相違点があります。基礎科目(解剖学・生理学・病理学他)では、歯学部でも医学部と同様に全身のことを学びます。 臨床科目では、内科学・外科学・眼科学など医学部の科目も関連医学として学びますが、主に歯科保存学・歯科補綴学・歯周病学・口腔外科学・歯科矯正学など、歯学の専門性に沿った科目を学びます。 管轄の法律は歯科医師は歯科医師法、医師は医師法ですが、両者は非常に良く似ています。ただ歯科医師はその対象とする部位が限られていますが、歯科治療に付随した行為であれば全身麻酔・呼吸管理その他も行えます。もちろん死亡診断書も書くことができ、医療分野における重要な資格であることは言うまでもありません。 関係法規(歯科医師法) 明治39年5月2日、歯科医師の身分や業務を規定する旧歯科医師法が公布されました。その後、旧歯科医師法は昭和17年2月25日に、国民医療法に吸収される形で廃止されました。5月2日の「歯科医師記念日」は、この旧歯科医師法の公布を記念して、日本歯科医師会が昭和32年に制定したものです。 現行の歯科医師法は、歯科三法(歯科医師法、歯科衛生士法、歯科技工士法)の一つで、昭和23年7月30日に公布、同10月27日に施行されました。 第1条では、「歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌ることによつて、公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」とし、続いて、歯科医師免許や歯科医師国家試験、臨床研修などの他、歯科医師の職務や資格について定めています。