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デジタル歯科診療の普及には、“臨床データ”が不足
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デジタル歯科診療の課題:「デジタル化の普及には、“臨床データ”が不足」

 

日本デジタル歯科学会が前号(2516)の通り、42324の両日に開催されたが、歯科臨床の一部では、既に始まっており報告もされている。現実にどう活用をしているのか注目されるが、矯正、インプラント、補綴の症例への課題を含めて報告していく。

 

△矯正:「アライナー矯正がデジタル化を促進」長尾龍典氏(京都府開業)

「日本のCT保有数は100万人あたり116 台(G7 平均 39.7 台 ※2020 年OECD)と世界と比べてもダントツのトップである。不景気といわれながらも着実に医療大国として世界をリードしている。歯科医療においてもデジタル化が進み、コーンビームCT(CBCT)だけでなく口腔内スキャナー(IOS)の普及率も伸びてきている」と現在の市場を紹介。デジタル化そのものは、可動・変形の少ない硬組織を扱う歯科医療におけるデジタル化は相性が良く、補綴治療・インプラント治療といち早く導入されてきた歴史を示しながら、そのターニングポイントになったとされるインビザラインを上げて、「アライナー矯正旋風が起きたことで、矯正治療のデジタル化が一気に進み始めた。その背景にはIOSとのコンビネーションが 一躍を担っている。 そして、今まさにこのIOSを基軸として、矯正・インプラント・補綴それぞれのデジタルプラットフォームがインテグレーションしようとしている。これは、診断から分析、治療プラットフォームまでのデジタル化、もしかすると近い将来、最適解までがAIによって導き出される時代が来ることを予測させる」と展望した。

 

△インプラント:「口腔内スキャナー導入がポイント」山羽徹氏(大阪府開業)

昨今の歯科臨床におけるデジタルテクノロジーについて「その進化は著しく、多くのデジタルデバイスが市場が活況している。特に口腔内スキャナーは多機種が販売されており、その普及率は急速に上昇している」とし、こうした背景を受けて、「口腔内スキャナーを導入することで、チェアサイドで口腔内の情報をデジタル化し、様々な分野へ応用することが可能となり、デジタルテクノロジーを活かした治療の幅が大きく拡大する」と可能性を指摘した。さらに「規格性の高いインプラント治療においては診査・診断のステージから最終補綴、メインテナンスまで幅広い応用が可能であり、インプラントソリューションを大きく変革させられるところに到達している」という。その他のハードウェアやソフトウェアにおいてもより使いやすく、機能性が向上している現在、このデジタルテクノロジーの発展について言及。「インプラント治療のコスト削減、正確性の向上といった診療サイドにおけるメリットのみならず、低侵襲、治療期間の短縮などの患者に対する恩恵をももたらす。さらに、デジタル化することで治療の多くをビジュアル化することができ、患者も含めた治療に関わる全ての人々と治療情報の共有し、コミュニケーションを円滑に行うことができる」とした。

 

△補綴:「患者予約・診療・確定申告等まで一連がデジタルX」荒井昌氏(東京都開業)

Xとはデジタルトランスフォーメーショ ンの略称。その単語の持つ意味をどのくらい理解できているのかは疑問である。また、それを歯科に応用するということがどのような意味と目的を持つのかを考えさせられた」と最近の現状認識を示した。「レントゲン写真のデジタル化やレセコンは、デジタイゼーションと呼ばれるデジタル化の 3 ステップのファースト段階。セカンド段階のデジタライゼーションを経て、サード段階のデジタルトランスフォーメーション(X)を目指さなければならない」。当然であるが、歯科医療におけるXを考える場合、一般開業医が導入できる仕組みを考えなければならないのは現実である。「治療行為そのものに限るのでなく、患者の予約、初診受付、診療、会計、次回予約、技工管理、各種労務管理から支払いや確定申告までを全て一元化したワンステップのデジタルフローができて、初めてXということができる」と強調した。今後の展望として、「少子化が進み、今後の人材採用や教育は一層の困難と想定される。これを解決する唯一の方法が、歯科クリニック全体のX化だと信じている。人は単純作業をやめて、効率よく人間にしかできないことに注力する時代がきている」と力説した。

 

【取材後記】

最後に講演した荒井氏は、東京都・神奈川県で10軒の歯科クリニックを経営。規模に応じながらデジタルDXを目指している。予約、診療、歯科技工サイド等で着実に進めている。この分野でのトップレベルとされる歯科医師であるが、逐次進めている臨床現場を報告。その内容に講演を聞いていた聴衆は、時代の先端を歩みながら歯科を見据えていることに戸惑いを抱きつつ、その可能性に期待を寄せていた。座長から質問を求められたが、何を質問していいのか戸惑いがあるほどであった。課題については「デジタル化の基礎となるデータがまだまだ少ない。予想より早く来るのがAIデジタルの世界。今は、10年先を展望しているという。