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医学・歯学教育における「共用試験」とは
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医学・歯学教育における「共用試験」とは

 医学部や歯学部の学生が受けなければならない全国試験

 医学部や歯学部の学生は、6年間の学修中に、自分の大学が実施する進級試験や卒業試験にパスしなければなりません。しかし、それとは別に、次に示す全国統一試験があり、それにも合格しなければなりません。
その試験とは、

  • ①臨床実習前の全国統一試験   :医療系大学間共用試験実施評価機構が実施
  • ②臨床実習後の全国統一試験   :医療系大学間共用試験実施評価機構が実施
  • ③医師・歯科医師のための国家試験:国(厚生労働省)が実施

の3つです。

 そして、①の試験に合格しなれば、②の試験を受験することはできませんし、②に合格しなければ③の国家試験の受験資格もありません。以下、①と②の試験についてご説明しましょう。

 試験を実施している医療系大学間共用試験実施評価機構とは

 この①と②の試験は、公益社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構が実施する試験です。この機構は、わが国の医師・歯科医師養成のために、すべての医学部(82大学)と歯学部(29大学)が参加して作った組織です。

 そこでは、各大学が作成した試験問題のうち、よい問題を集めてプールしておき、そこから問題のセットを作って各大学に提供します。そうすることで、より信頼性の高い試験が可能となります。つまり、よい試験問題をに利する試験ですから共用試験と名付けられ、実施機関として「医療系大学間共用試験実施評価機構」が設立されました。

 医学生・歯学生は臨床実習で磨かれる

 医学部や歯学部の教育では、毎日たくさんの講義を受けなければなりません。そのほかに、講義室を出て、病院の外来診察室や病室で患者さんに接しながら経験を重ねる「臨床実習」があります。この臨床実習は、教科書では学べない実際の臨床現場で経験を積む機会ですから、将来、医師や歯科医師になるためのきわめて有効な学修方法といえます。

 しかし、そのためには実際の患者さんに接する前に、医学生や歯学生が知識だけでなく、患者さんに接する態度や診察技能を修得していることを確認しなければなりません。それが十分でなければ、臨床実習を許可するわけにはいきません。

 そして、臨床実習が終わった段階で、医学部や歯学部を卒業させ、社会に出してもよいかを確認しなければなりません。それが十分でなければ、大学卒業を許可するわけにはいきません。

 これらのことを評価する試験には次のようなものがあります。

1) 臨床実習開始前の試験

 臨床実習で、指導医のもとで許された範囲の医療行為をすることを許可してよいかを判定する試験です。(この試験は、医学系は令和5年から、歯学系は令和6年から、医師法、歯科医師法で定めた公的試験になります。)

 これには

  • ①コンピューター画面上に提示される知識の修得度を評価する試験(Computer Based Testing; CBT):画面上の五肢択一問題などを次々に解答していく試験です。
  • ②患者さんに接する態度や診察の仕方、基本的な技能の修得度を評価する試験(臨床実習前客観的臨床能力試験Pre-Clinical Clerkship Objective Structured Clinical Examination; Pre-CC OSCE):模擬の患者さんやシミュレータを利用して、その対応の仕方を評価する試験です。

の2種類があります。

2) 臨床実習後の試験

 医学生と歯学生が、大学を卒業させてもよいと判断できる臨床能力を修得したか、卒業後の臨床研修を開始できるレベルに到達できたかを評価する試験です。

 この試験は、医学系と歯学系とで異なる形式で行われます。

  • ①医学系では、臨床実習後客観的臨床能力試験(Post-Clinical Clerkship Objective Structured Clinical Examination; Post-CC OSCE)といい、ある症状を訴える模擬の患者さんに、医学部6年生としてどう対応できるかを評価する試験です。
  • ②歯学系では、2種類の試験が行われます。
    • ⅰ 臨床実地試験(Clinical Practice Examination ; CPX)
      臨床実習現場での態度を中心とした評価をする試験です。
    • ⅱ 一斉技能試験(Clinical Skill Examination ; CSX)
      診療技術の修得状況について模型を用いて評価をする試験です。

 これらの試験により、医学部や歯学部における臨床実習がさらに充実し、わが国の医学生・歯学生の能力がより一層向上することが期待できます。

一部法改正による意義付加の共用試験が施行:医科4月&歯科医は来年スタート

 

医師・歯科医師の国家試験に関係する共用試験に関係する改正歯科医師法が2021年に成立・公布。内容は、大学共用試験合格者(医学部学生)は、20234月施行される。医師法に基ずく共用試験に合格して、医学部での医業を行えること。また、20254月から医師国家試験の受験要件に共用試験合格が必要となることになった。歯科医師は1年遅れて、それぞれ2024年に、2026年から施行される。歯科について経緯・背景を紹介。

 

歯科大学関係者は一つの整理として冷静に受け入れている。特にいわゆる“Student Dentistである歯学部学生の歯科医業については、かつて、患者からの「歯科医でない学生が診療している」としての臨床でのトラブルもあったが、改正歯科医師法で、法的には違法性を阻却できることになった。これも新しい時代要請といえそうだ。

 

その背景には、歯科医師法第17条により「歯科医師でないものの歯科医業 は禁じられている」について、歯科医師免許を持たない歯学生が、大学における臨床実習で行う歯科医行為については、その目的・手段・方法が社会通念から見て相当であり、歯科医師の歯科医行為と同程度の安全性が確保される限度であれば、基本的に違法性はないと考えられている」。その一方で、大学が行う臨床実習について、診療参加型の実習が十分に行われていない要因として、歯学生が臨床実習で行う歯科医行為についての法的な担保がなされていないことが指摘されている診療参加型の臨床実習において、「歯学生がより実践的な実習を行うことを推進し、歯科医師の資質向上を図る観点から、共用試験に合格した歯学生について、歯科医師法第17条:歯科医師でなければ、歯科医業をなしてはならない、との規定にかかわらず、大学が行う臨床実習において、歯科医師の指導監督の下、歯科医療に関する知識及び技能を修得するために 歯科医業を行うことができること」としたようだ。

 

第1回歯学生が臨床学習で行う歯科医業の範囲に関する検討会(2022年:厚労省)での歯科以外の視点からの専門家の発言要旨は以下の通り。

 

<医科視点>

「医科と歯科とは、やはり学生がやっていることが違う。 医科の場合は、やはり入院中心の実習が多く、歯科に比べて実手技については余り大きな意味がないとは言わないが、大きな重点が行われているというよりは、実際には 実患者さんに医療面接を行ったり、あるいは検査計画を立てたり、電子カルテの記載をしたりが医行為に思われている。ですので、実際患者さんにメスを入れたり、あるいは何か薬物を注射したりというようなことは、医学生のところではない」と吐露していた。

 

<法曹視点>

「東京地裁は医科と歯科が両方医療集中部という所に係る。どういう違いがあるのかと言いますと、やはり歯科は、患者の主訴を記録していないカルテが多い。あとは SOAP(ソープ=電子カルテを記載する考え方) に沿っていないために、 歯科医師が何を考えていたのかというのがカルテから推察できない。また、インフォームドコンセントの在り方が、医科は過剰気味だが、歯科は、丁寧になされておらず、もう少し改善の余地がある」と指摘。「インフォーム ドコンセントで気を付けなければいけない点はないが、指導医の先生が インフォームドコンセントを取るのに当たって、物事のリスクをきちんと説明しているということを、意識的に学生さんに見せるようにするとトラブルを防げる」とした。