歯科医院が舞台な小説|葛飾区お花茶屋の歯科・インプラント|コージ歯科

歯科医院が舞台な小説

短編?小説「太陽」(森絵都著):歯科医師への歯痛から相談から展開する!

25の短編小説」朝日文庫の中の小説「太陽」(森絵都著)」に注目した。歯科医院が舞台であり、そのストーリーは勿論だが、作家が取り上げる時に、読者にネガティブな内容を想定させながら、歯科医院のイメージ、歯科医療がどのように書かれているか、気になるところ。歯科医院での歯科医師風間先生と患者加原さんとの会話に頷きながら作家の森氏の歯科への理解も推察してしまう。まずは、歯痛を市販薬で紛らして我慢していたけど限界ということで、風間歯科医院に行った加原さんの胸の内から始まる。

「予約の必要はありません」。予約の依頼の電話をした私に、風間歯科医院の受付嬢は告げた。「月水金の時間内でしたら、いつでも、お好きな時にいらして下さい」。助かったと安堵した直後、その倍の不安が私を襲った。「予約が要らない歯医者。それは、人気が無い歯医者と同義なのではないか。そして人気がない歯医者とは、技術がない歯医者と同義ではないか。あるいは、気性が荒い歯医者、高圧的な歯医者、心の冷たい歯医者、うっかり者の歯医者、手先の不器用な歯医者。やたらインプラントを勧める歯医者等々」とイメージを膨らませる。

「痛みに襲われたのが、緊急事態宣言の発出されたその日のこと。ステイホームどころでない激痛に、慌てて近場の歯医者捜すも、ある歯科医院は診療時間を短縮中で、三週間先まで予約が埋まり、ある医院はスタッフ不足のため新規患者を受け付けておらず、ある歯科医院は56日まで休業中とことごとく空振りに終わった」と悪戦苦闘。結果として、徒歩圏にある歯科医院が“風間歯科医院”だったという。今どきウェブサイトがなかったり、口コミが一件も見つけられなかったり、予約が要らない以外にも不安要素が多い歯医者であったが、ここで歯科医師と患者が初めて会い会話が始まった。

野原さんは「奥歯の歯痛ですが、やはり虫歯ですか」と原因を確認するため、検査を実施した結果、「加原さんの奥歯は何の問題は見つかりませんでした。歯茎も至って健康です。物理的には痛む理由はありません」と説明。でも「痛いんです」「わかります。その痛みに嘘はないでしょう。僕はそれを“代替ペイン”と呼んでいます」。釈然としない様子の加原さんに、「加原さんの中で、実際に痛んでいるのは、歯でなく別の部分です。歯はその身代わりとして痛みを引き受けているのにすぎません」「別の部分?」「端的に申しあげれば“心”です。特殊な例でなく、世の中には、心因的な胃痛、頭痛があります。加原さんの場合、それが歯に出ただけのことです」。では、「どうすれば治るのですか「真の痛みの正体を見極め、直視することです」と言われながらも遣り取りが続いた。

その中で加原さんから告白があった。「私は豆皿の収集者ですが、常滑で目に留まった黄色の豆皿を買ったのですが、一目惚れです。自分だけの太陽、手にした瞬間、心にポット陽がさしたのです。10年間、大事にしてきたその豆皿を壊してしまいました。でも歯痛の原因が、別れた恋人より豆皿が原因とは」と複雑な気落ちに。「加原さん、悲しみを思う存分味わってください」との言葉を受け日時の経過と共に痛みも軽減。そこで、気になる支払の件になると風間歯科医師は「お代は結構です」「そうはいきません。話を聞いていただき、お陰て痛みが和らぎました。立派な治療です。先生だって経営が・・・」というと「大丈夫です。ここを開いている日以外は、大学病院の歯科を手伝っていますから」と。そんな時、玄関から患者が入ってきた。「しばらくですね、新井さん」と再び時間が流れ出す。「診察ですか、雑談ですか」「雑談です。でもせっかく来たから歯石を取ってもらうかな」と会話が続いた。毎日、診療している歯科医師と患者の関係の遣り取りは患者にとって大事な内容であることが再認識させられる内容でもあった。

【ネット上での読後感想】「コロナで世間が大変な時だからこそ大切なものを失ってしまったものによる歯痛の原因“素敵な犯人”話で終わるのも何かとてもしっくりきた気がする」「〝失って初めて大事なものに気づく、と人は言うけれど、失って初めて気づく大事じゃないものもある”は深い。風間先生みたいな歯医者がいてくれたらいいのに」など

絵都(もり えと、本名:雅美[1]1968[2]昭和43年〉42 – )は、東京都出身の小説家日本ペンクラブ常務理事[3]

来歴

日本児童教育専門学校児童文学科卒業、早稲田大学第二文学部文学言語系専修卒業。児童文学創作の傍らアニメーションのシナリオを手がける。1990、『リズム』で第31回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー[2]。同作品で翌年、第2回椋鳩十児童文学賞も受賞した[2]。その後も数々の作品で多数の文学賞を受賞している。第46回産経児童出版文化賞を受賞した『カラフル』と、第52回小学館児童出版文化賞を受賞した『DIVE!!』は映画化とアニメ化もされ[4]、話題になった。2006、『風に舞いあがるビニールシート』で第135回直木賞受賞[5]ネットから

受賞歴

  • 1990(平成2年) – 『リズム』で第31回講談社児童文学新人賞を受賞。
  • 1991(平成3年) – 『リズム』で第2回椋鳩十児童文学賞を受賞。
  • 1995(平成7年) – 『宇宙のみなしご』で第33回野間児童文芸新人賞、第42回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞[2]
  • 1998(平成10年) – 『アーモンド入りチョコレートのワルツ』で第20回路傍の石文学賞を受賞[2]
  • 1998(平成10年) – 『つきのふね』で第36回野間児童文芸賞を受賞[2]
  • 1999(平成11年) – 『カラフル』で第46回産経児童出版文化賞を受賞。
  • 2003(平成15年) – 『DIVE!!』で第52回小学館児童出版文化賞を受賞。
  • 2006(平成18年) – 『風に舞いあがるビニールシート』で第135回直木賞を受賞。
  • 2017(平成29年) – 『みかづき』で第12回中央公論文芸賞を受賞[4]
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