書籍「厚労省」から|お花茶屋の歯科・インプラント|コージ歯科

書籍「厚労省」から

籍“厚労省”書評:各局・課の課題&技官の課長以上のポストの意味も

 

厚労省を説明をしている書籍「厚労省」(発行=新潮新書・820円・220)が出版された。著者は東京新聞記者(社会保障担当)の鈴木穣氏。副題が“劣化する巨大官庁”と銘打っているように、その管轄エリアは、以前から指摘されているように幅広い。厚労省内部の背景・課の内部事情・課題が指摘されているが、感染症、採用現状、政策プロセス、政権との関わりを区分して記者の視点から記している点が興味を誘う。

歯科分野の紹介は、2004年の中医協を舞台にした贈収賄事件に関係した事実に止まり、今後の歯科に期待する関連記事はなく、“歯科”への関心・存在感が省内では希薄であることにもなった。歯科関係者には十分承知のことであるが、少しでも新しい展望を示唆への期待は、今後も継続するしかない。医療分野には、医政、保険、健康、医薬・生活衛生の4局がある。歯科の最高ポストとされる、医政局“歯科保健課”の解説はなく、保険局、健康局、医薬・生活衛生などについて文章を割いている。それぞれ局の責務・特徴、さらに厚労省としての政策決定を巡る葛藤や人間関係まで言及している。

医政局は、少子高齢化、疾病構造の変化などから、社会が医療に求める内容も異なるが、実際には、良質で効率的な医療提供体制の実現に向けた政策を担っている。地域包括ケアシステムの構築が重要政策の推進している。その中の歯科保健医療の課題も指摘されている。取り巻く状況として、小児のう蝕は減少傾向にある一方で、歯科医療機関を受診する患者は高齢化しており、歯科医師や歯科医療に求められる内容は激変しているのは事実。昨今のコロナ感染症邪拡大もあり、口腔ケアが誤嚥性肺炎を予防することなど、口腔と全身との関係に着目した記事が散見されるケーズが多くなっている。

さて冒頭で、厚生行政の歴史・意義を言及しながら、職員は32千人だが、霞が関本省には4千人、他は地方厚生局など出先機関にいる。事務次官をトップに、次官クラスの厚生労働審議官・医務技監がいる。局長の業務を担う審議官が約20名いて、個室の執務質が与えられている。巨大な組織を牽引していくエリート集団になる。

そこで、厚労大臣が問われてくる。その求められる資格として、「ある程度の厚生行政に精通していることが必要とされる。広範囲の担当領域からして、“素人”では無理」と明確に指摘している。国会答弁能力も問われており、政権の支持・不支持にも与えやすいことから、舛添要一、塩崎恭久、根本匠、加藤勝信、田村憲久の歴代大臣を挙げているが、政策の適否はともかく、共通しているのが答弁能力を有していることかもしれない。厚労省の担当が国民生活に身近な問題にある特徴から、マスコミからすれば、報道する意義を確保しやすことから、答弁能力は看過できないことになるのかもしれない。

厚労省の特徴でもある専門職(技官)の説明を続ける。「医系技官約330名で、内訳は医師300名・歯科医師30名、看護系技官:約80名、薬系技官:約180人。こうした専門家の人材確保に苦労している」と指摘している。その一つとして、医務技官の給与の課題を取り上げている。ここで歯科も参考になるのが次の内容である。「国家公務員総合職試験合格者は、将来、次官をトップに局長・審議官のポストがある。その次官級の医務技監は2017年に設置されたポストである。次官級ポストは官僚としてモチベーションに関係してくる」「看護系は課長、薬系技官は審議官。歴代課長は、それ以上のポストがないため、外部に出ざるを得ず、大学教授か関係団体に転出する」「上位ポストは、発言力が増しその影響力から、職務意欲が向上することから、技官からポスト確保が要望されている」。

歯科も看護系と同様に課長が最高のポストであり、転出先が限定されている歯系課長なら、なおさらである。今後、歯科界全体・歯系議員の努力で、“審議官ポスト”確保が最大の課題かもしれない。歯科に関与する官僚機構の裏事情は、日歯内部で議論はされていると想定されるが、表立っての論議は聞こえてこない。著者は「生活に関係し、国民の命と健康を守る巨大官庁。取材を通じて“厚労省劣化”を痛感したことが、本書執筆の動機」としている。一読、勧めたい。