2022/01/28
保健所長の背景経緯：地域性・時代の背景・住民と歯科の可能性
新型コロナウイルス感染症拡大防止対策は、昨年来から継続して懸命に対応しているが、新たにオミクロン株による感染症への対応にも迫られている。マスコミ報道の在り方にも問題との指摘もあるが、いずれにせよ今後の推移が注目される。同時に昨年来から顕著に保健所機能・責務が改めて問われてきている。そもそも論として保健所長の在り方が、2004年に問題視されたことがあり、地域医保健法施行令改正案が浮上。“保健所長の医師資格要件に関する見直し方針”が検討されたが、その理由については、要旨次の通り。「健康危機管理への対応を求めて、地域の安全・安心の拠点としてより高い管理能力が保健所に求められており、今後より高い水準の保健所長を確保することを目指す」としていた。
結論として「保健所長資格要件について、医師による人材確保が難しい場合に限っての例外措置として「公衆衛生行政に必要な医学的専門知識に関し医師と同等またはそれ以上の知識を有する者」を保健所長に認めることとし、医師以外の職種にも門戸が開かれた。ここで、医師以外の者としては、①公衆衛生行政に必要な医学専門知識に関し医師と同等または、それに以上の知識を有する技術吏員、②一定期間以上の公衆衛生の実務経験、➂一定期間の養成訓練の課程を修了。課程は国立保健医療学院の保健所長用1年コース。さらに、地方公共団体が医師確保に努力したにもかかわらず確保できない場合には、例外を認める、例外の期間は概ね2年程度とする、医師を保健所の職員として必置する、としている。
以上が医師以外への可能性であるが、「保健所長の職務の在り方に関する検討会」の報告書としてもまとめが出され、そこでは、“医師資格要件を維持すべき” “医師資格要件に例外を設けるべき”の両論併記になった。なお、この見直しに故梶原拓(当時・全国知事会会長・岐阜県知事)は、「例外的な措置であるが、医師以外の者が保健所長の道を開いたという意味では一定の評価ができるが、政令で指定されようとしている保健所長になりうる医師以外の者の要件を満たすことは非常に困難であり実効性にはなはだ疑問であることから根本的な見直しが必要」とコメントを公表(2004年4月)していた。
当時、改革派の知事の代名詞でもあった梶原知事であったが、その評価は別にあるが、“地方分権”が問われた時代背景もあった、“古くして新しい問題”を秘めていたかもしれない。ちなみに、最初に歯科医師として保健所長に就任されたのは2012年に大西宏昭氏（大阪府・現関西女子短期大学教授）と井下英二氏（滋賀県・現滋賀県衛生科学センター所長）とされている。歯科口腔衛生の領域で活躍されていた歯科医師であるが、地域行政・保健に精通している。2016年：埼玉根・遠藤浩正氏、2017年：島根県・梶浦靖二氏、新潟県・永瀬吉彦氏がそれぞれ保健所長に就任しており、活躍していると地元からの情報である。歯科医師として、地域から必要とされ活躍する歯科医師の実務・実績を歯科界として期待したい。
なお、かつて厚労省の歯科有識者会議のメンバーとして貴重を述べていた山本光昭氏(医師・東京都中央区保健所長⇒社会保険診療報酬基金理事)は、「会議の委員に任命され、出席して関係者の意見を聞く中で、歯科の重要性を認識した。やはり広く情報収集と勉強は必要」と歯科への理解を示唆していた。一昨年4月に基金に赴任し、診査の結果の不合理な差異の解消とともに、審査業務の効率化・高度化を図りながら、日本医療・病院管理学会等の理事、大学の客員教授、横浜市のアドバイザリーボードの委員を務めている。“歯科の存在感”はどのステージでも不可欠であり、行政、地域歯科保健、公衆衛生、診療を始め、具体的な企画・事業のさらなる展開が求められてくる。
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